いよいよ暑くなってまいりました。これから梅雨の時期になると、気温と湿度で大変なことになりそうです。以前はこんなに暑くなかったようにも思うのですが。
さて、ここ2ヶ月ほど古典系寓話をとりあげていましたので、今回は標準的なお話を紹介しましょう。古い時代から各種寓話集に採録されている、定番とも言えるお話です。
「烏と狐」
烏が高い木の枝に止まって、窓辺から盗ってきたチーズを食べようとしたとき、狐がそれを目にして、このように言いはじめた。「おお、烏さん、あなたの羽の素晴しいこと!
体も顔も何と美しいこと! もし声があれば、どんな鳥もあなたには敵わないでしょうに」
烏は愚かにも、口を広げて声を出そうとして、チーズを落としてしまった。それを狡猾な狐は素早く頬張った。愚かな烏は、欺かれて悲しむことになった。
場合によっては、烏のくわえているものが変わりますが、基本的には同じ話です。これに「考えの足りない人にぴったり」という一言を付す寓話集もあれば、「美徳より知能が勝る」といった一言を付している寓話集もあります。
いずれにせよ、お話の基本的な流れは、烏が言葉巧みに近付いてきた狐に騙されるというものです。見るからに狐の発言はうさん臭いものですから、
Every medal
has two sides. <何事にも裏がある>
と考えて、、烏は狐が話しかけてきた意図を読むべきでした。とはいえ、
The fox preys farthest from
home. <簡単には尻尾を掴まれない>
ですから、狡猾な相手の意図を読もうにもそう簡単ではありません。このお話の場合は、狐のお世辞があまりに大袈裟なので、烏も分かりそうなものですが、自尊心をくすぐる狐の方が上手だったということになります。
甘い言葉には気をつけろと言いますが、悪意を持って近付く者を避けるのは難しいものです。烏の失敗は、狐の言葉にひっかかったというよりは、狐の目につく所に止まったということにありそうです。したがって、
Discretion
is the better part of valor. <君子危うきに近寄らず>
と決めこんで、はじめから危険を回避するのがよいのかもしれません。ただ、これは状況を判断する思慮深さがあってはじめて可能なことですので、解決策とは言えませんね。
とまれ、まずどうすべきかということでは、文脈や意図のよくわからない誉め言葉には慎重であるべきということでしょう。――誉め言葉に対してそんなことを考えないといけない世の中というのも、何か嫌なものですが。 |